政党選択の理由
支持政党 |
||||||
SLD -UP |
PSL | AWS | P O | U W | KPEiR | |
変化への期待、よりよく統治するだろう | 13 |
2 |
0 |
25 |
13 |
4 |
プログラム、経済プログラム、プラグマティズム、経済状況の改善 | 25 |
12 |
16 |
26 |
36 |
0 |
世界観的・イデオロギー的見解、愛国的・国民的・宗教的アピール | 5 |
2 |
33 |
13 |
23 |
2 |
社会問題、貧しい人の状況の改善、医療、教育、裁判 | 18 |
5 |
7 |
6 |
10 |
17 |
リーダーの資質、賢く教養があり分別がある、専門家、政治文化 | 11 |
7 |
5 |
21 |
22 |
0 |
誠実、汚れておらず、信用できる、信頼感がある | 8 |
3 |
7 |
10 |
5 |
0 |
行動の一貫性、見解が安定している、予測可能、言い争わず、分裂しない | 7 |
0 |
3 |
0 |
0 |
0 |
自分のような人の利益を守る、「自分の」政治家を支持する | 2 |
66 |
1 |
0 |
8 |
73 |
失業対策、失業の減少への期待 | 7 |
0 |
2 |
3 |
0 |
0 |
AWS、『連帯』、右翼政府への失望 | 15 |
0 |
3 |
4 |
0 |
0 |
SLDが統治していたとき(ポーランド人民共和国)のほうがよかった | 9 |
1 |
0 |
0 |
0 |
0 |
独立した党、新しい、しがらみのない党 | 0 |
0 |
0 |
22 |
0 |
0 |
いつも忠実に票を入れきた、家族も投票している、統治の経験がある | 8 |
4 |
34 |
2 |
14 |
3 |
他の選択肢がない、よりましな悪、票を入れる人がいない | 1 |
0 |
0 |
2 |
2 |
0 |
漠然とした理由、一番気に入っている、同じような考えをもっている、シンパ | 1 |
0 |
0 |
2 |
2 |
0 |
その他 | 1 |
0 |
2 |
1 |
0 |
6 |
回答困難、わからない | 2 |
8 |
0 |
2 |
0 |
0 |
N= | 269 |
81 |
58 |
75 |
34 |
27 |
2001.4.6〜9 CBOS調査
(N=1036)
典拠 : CBOS. Komunikat z
badan. BS/57/2001
<コメント>
この調査は、なぜ、あれこれの政党に投票したいと思うのかについて、与えられた選択肢から選ぶのではなく、回答者自身の言葉で答えたものを調査者が分類したものである。
全体では、プログラム (政策)
への支持が22%、自分の利益を代表してくれるが15%、リーダーの資質と社会問題がそれぞれ12%、変化への期待11%、世界観的見解が10%などとなっている。
しかし、より興味深いのは、支持政党別の回答である。それぞれの政党の性格を、支持層という観点からある程度浮き彫りにするものとなっているからである。なお、民主左翼同盟
(SLD) と労働同盟 (UP)
は、選挙協定を結び、統一候補者リストで選挙に臨むことになっているので、SLD-UPブロックとして扱われている。
もっとも顕著なのは、ポーランド農民党 (PSL) と全国年金生活者党 (KPEiR) である。有権者の眼から見て、それらが利益代表政党であることは明白である。PSLは、唯一の 「階級政党」 と言われることがあるが、調査結果は、このことを裏づけている。ただし、いつものことであるが、PSLの支持者のなかでは 「回答困難、わからない」 と答える者が相対的に多い。KPEiRの支持層にそれが見られず、彼らがより自覚的な支持者であることがうかがわれる。
支持率が群れを抜いて高いSLD-UPの場合、プログラム、次いで社会問題を挙げる者が多いが、それとともに、現連帯選挙行動 (AWS) 政権にたいする失望感がこのブロックへの支持へと向けていることがわかる。SLDの支持者は相対的に支持政党に 「忠実」 であると言われることが多いが、拡大した支持層の少なくとも一定部分は、政権の実績次第で投票行動を変える可能性があるという意味で浮動的であると考えられる。
これにたいして、むしろAWSの方が、AWS (『連帯』) 支持者としてのアイデンティティを感じている者 (「いつも忠実に票を入れてきた」 「家族も投票している」) によって支えられていることがわかる。彼らのアイデンティティは、社会=経済政策よりも、世界観的 ・ イデオロギー的見解 (つまりはナショナルでカトリック的な、あるいは反共的な見解) に由来しており、これが 「右翼」 という自己規定と結びついている。AWSの支持者は与党時代の4年間に減少してきているので、この結果は、離れずに残った忠実な支持層の態度を表わしていると見るべきであろう。政治グループとしてのAWSは実際には危機に瀕しているのであるが、プログラムの相違にもかかわらずAWSを維持しようとするリーダーの努力が続けられているのは、AWSという 「ブランド」 がなくなれば行き場を失いかねないこのような支持層の存在のゆえであると考えられる。
新興勢力の市民政綱 (PO) の場合、他の政党には見られない「新しい、しがらみのない党」という理由がかなりの比重を占め、変化への期待も高いのが特徴的である。経済的自由主義を軸とするプログラムと「誠実な」オレホフスキによって象徴されるリーダーの資質が、有権者をPOにひきつけていることもわかる。プログラムや世界観を支持理由とする者は、「中産階級」 を基盤とする 「保守リベラル」 の党としてのPOにアイデンティティを感じる層と言ってよいであろうが、新しさや変化への期待は、一過性のものに終わる可能性もある。POは、リベラルな経済政策(所得税の引き下げや労働の規制緩和)による経済成長をつうじて雇用を創出することを謳っており、失業緩和への期待がSLD-UPだけではなくPOにも向けられている可能性がある。
自由同盟 (UW) を支えているのは、何よりもプログラム志向的な有権者である。リーダーの資質とならんで世界観的・イデオロギー的見解をあげる者も比較的多いが、中道的なUWにどのような世界観的見解が見出されているのか、明確ではない。興味深いのは、UWを利益代表と見る者の比重がKPEiR、PSLに次いで高いことである。これは、「中産階級」 的な層や若い世代と考えられるが、そうだとするとPOと競合することになる。忠実な支持者の比重が比較的高いことは、AWSと同様、中核的支持者のみが残っていることを示唆している。
もうひとつの政党の候補者を選ぶことができるとしたら、どの政党を選びますか?
第1の支持政党 |
|||||
AWS | PO | PSL | SLD +UP |
UW | |
連帯選挙行動(AWS) | - |
19 |
6 |
0 |
7 |
第三共和国キリスト教民主主義 (ChD V RP) | 13 |
5 |
2 |
1 |
1 |
全国年金生活者党 (KPEiR) | 13 |
1 |
3 |
7 |
3 |
市民政綱 (PO) | 31 |
- |
10 |
18 |
33 |
ポーランド社会党 (PPS) | 0 |
0 |
1 |
3 |
0 |
ポーランド農民党 (PSL) | 4 |
8 |
- |
28 |
11 |
人民民主党 (PLD) | 0 |
0 |
3 |
0 |
0 |
ポーランド復興運動 (ROP) | 8 |
2 |
5 |
2 |
3 |
民主左翼同盟 (SLD)+労働同盟 (UP) | 0 |
12 |
25 |
- |
24 |
現実政策同盟 (UPR) | 2 |
4 |
4 |
2 |
8 |
自由同盟 (UW) | 0 |
30 |
3 |
10 |
- |
『自衛』 | 0 |
0 |
10 |
1 |
0 |
その他の政党 | 3 |
0 |
0 |
1 |
2 |
そのような政党はない | 8 |
14 |
11 |
21 |
9 |
回答困難 | 19 |
6 |
16 |
5 |
0 |
2001.4.6〜9 CBOS調査
(N=1036)
典拠
: CBOS. Komunikat z badan. BS/57/2001
<コメント>
この調査は、各政党の支持層の性格を補足的に明らかにしている。
まず、注目されるのは、SLD-UPの支持者がAWSを、またAWSの支持者がSLD-UPに投票することはありえない、ということである。SLDとAWSは、支持者の意識においても完全に対抗的な位置にあることがわかる。ただし、AWSの支持者の少なからぬ者がKPEiRに投票する用意のある点は注目される。KPEiRは、SLD-UPと選挙協力を結んでいるからである。この時点では、KPEiRのそのような政治的傾向は知られておらず、もっぱら年金生活者の利益代表政党と見られていると考えられよう。
興味深いのは、AWSの支持者がPOへの共感を強く示しているのにたいして、プログラム上はPOと近いはずのUWに投票する可能性がまったくないことである。2000年6月まで連立のパートナーであったUWにたいする、AWSの支持者の反感を見てとることができる。
AWSの支持者に特徴的なのは、全体としては泡沫政党でしかないヴァウェンサ
(ワレサ) の第三共和国キリスト教民主主義 (ChD V RP)
への共感をかなり明確に示していることである。ヴァウェンサやその党への支持というより、『連帯』
の伝統への一体感のしからしめるところであろう
(ChD V RPへの支持が次いで高いのはPOである。3人のリーダーのうちの2人までがグダンスクを基盤としており、その支持者の一部もヴァウェンサに精神的に近いことを物語る事実である)。
1993年から97年まで連立政府を維持していたSLD-UPとPSLの支持者は、AWS-UWの場合とは違って、元のパートナーに相互に投票する意思を強く示している。
POとUWの支持者のあいだにも、同様の相互性がはっきりと現われている。しかし、POの支持者がUWの次にはAWSをあげている
(その次がSLD-UP) のにたいして、UWの支持者はPOの次にはSLD-UPに向かっている。一方、SLD-UPの支持者の方は、PSLの次にはUWよりもPOに目を向けている。ある種のねじれが見られるのである。
しかし、いずれにしても、SLD-UP、PO、UWの支持者のあいだには
「リベラル」
な共通項があるのであり、『連帯』
派出自としての共通性をもつAWSとUWとの関係よりも近いことがわかる。
(2001.6.19)