ポーランド民主主義の評価

　　概して言えば、あなたは、わが国における民主主義の機能の仕方に満足していますか、不満足ですか？（％）

　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　２０００．３．３０〜４．４　CBOS調査 （N＝１１１１)

現在、わが国では次のように言えると思いますか、思いませんか？（％）

　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　１９９９．１２．３〜１２．５　CBOS調査 （N＝１５２２)

国家を民主的と見なすことができるためには、次の特徴のうちどれが重要で、どれは重要ではないと思いますか？（％）

　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　２０００．３．３０〜４．４　CBOS調査 （N＝１１１１)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　典拠 ： CBOS. Komunikat z badan. BS/123/2000.

＜コメント＞

　ポーランドにおける民主主義の現状については、一貫して不満足な人が満足している人よりも多いという傾向を前提としつつも、かなりの波があり、現在は不満足度の高い時期に当たる。これは、現政府にたいする支持率の低さと連動していると考えられるであろう (CBOSの調査によれば、２０００年４月には政府支持が２２％、不支持が４９％であった。９月には支持が２５％、不支持が４０％で、政府にたいする態度はやや好転している）。

　CBOSの調査では、回答者に自らの政治的見解を 「左翼」 「中道」 「右翼」 と自己規定させている。ポーランドで ｢左翼」「右翼」 が何を指すのかという問題は、立ち入った検討の余地があるが、それはともかく、現与党のAWS支持者がおおむね 「右翼」、野党第１党のSLD支持者がおおむね 「左翼」 と自己規定する傾向がある （それぞれ 「中道」 も含んでいる）ことは疑いない。この調査時点で、「左翼」 は２８．７％、「中道」 は２７．５％、「右翼」 は２０．８％で、残りの２３．０％が 「回答困難」 となっている。そして、「左翼」 のうち満足は２０％に過ぎず、不満足が７５％に達しているのにたいして、「右翼」 の４９％が満足で、かろうじて不満足（４５％） を上回っているのである。

　現状にたいする評価をもう少し立ち入って聞いた第２問を見ると、「世界観的寛容が存在する」 「市民的自由は守られている」 という自由主義的側面はかなりの程度評価されているのにたいし、「市民は国家の統治に影響力を持っている」 かどうかという狭い意味での民主主義的側面については、法の遵守状況と同様にかなり評価が低い。

　同時に、第３問からは、市民の民主主義観はかなり幅が広いことがわかる。「市民の個人的自由の保護」のような自由主義的要請に次いで、「議会による有権者の意思の代表」 「政党のプログラムのあいだの選択の可能性」 といった民主主義の制度的要請にも増して、「あらゆる家族の子どもにたいする平等な教育機会の保障」 「国家によるもっとも貧しい人びとへのしかるべき生活条件の保障」 「市民の福祉についての政府の配慮」 などの実質的内容 （福祉的機能）に高い位置づけが与えられていることが特徴的である。そのさい、「国の統治のために最良の人物の選抜」 が重視されている一方、「公的生活における市民の能動性」 はそれほどでもないことを見ると、市民の意識にはいくぶんエリート主義的な （選良頼みの）傾向があると言えるかもしれない。

　上記のような実質的内容を民主主義の概念のなかに含めるべきか否かは大いに議論の余地のあるところであるが、調査者はそのことを承知のうえであえて設問に加え、回答者のほとんどが、それを民主主義の特徴づけに含まれる、と見なしている。このことをどう考えたらよいか。他の諸国との比較分析が必要であろう。

　ところで、民主主義の現状にたいする高い不満にもかかわらず、民主主義が他のあらゆる統治形態に優位していると考える者は７１％にのぼり、そうは考えない者 （１２％） を圧倒している。民主主義の機能の実態にたいする不満が民主主義という統治形態そのものの否定につながる可能性は、いまのところ大きくはない （ちなみに、民主主義にたいする懐疑論者のもっとも多いのは、社会=職業別分類のなかの不熟練労働者で、２７％に達する）。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（２０００．９．２０）　BACK